学校での心ない偏見に傷つく医療関係者の子ども−偏見は無知と恐怖の産物−

  • 2020.04.10 Friday
  • 00:31

 S先生のフェースブックへの投稿をシェアというか引用させて頂きます。学校が再開されたとき、是非、児童生徒へ伝えて頂きたいと思います。また、流言飛語を拡散する事について考える教材として価値があると思います。本文は記名でしたが、ごく一部加筆修正しています。

 

JUGEMテーマ:学問・学校

4月6日 23:50 · 公開

【医療者も「人」という事】

 連日の報道でCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対して落ち着かない日々を過ごしていらっしゃる方も居られる事と思います。緊急事態宣言が1都6府県で出される見込みとなり、対象地域の医療関係者の皆様、そして対象地域含め生活を営まれている皆様においては不安や困惑の中、見えない敵と向き合っていらっしゃることと思います。皆様方の不安や困難を、都市部感染爆発している地域の当事者ではないながらも理解しながら、地方の一医療機関の勤務医師としての現状も発信できたらと思っています。断りなくシェア頂いて構いません。

 私は群馬県沼田市を中心とした中山間地域で診療をする一総合病院勤務医師です。今まで家族への影響があるため公表してきていませんでしたが、DMAT(災害派遣医療チーム)としてダイヤモンドプリンセス号のCOVID-19対応にも関わってきました。妻からは子ども達の学校における風評被害(ex. Sさんのお父さんは医者らしいし、コロナウイルスに関係しているらしいから、感染者が出たらSさん家が原因だよね)を心配され、この場も含めての公表を控えてほしいと言われてきていました。自主隔離期間(14日間)を終えた今、経過で国内の状況は変化し、現在は自病院及び自医療圏におけるCOVID-19に対する医療体制について検討及び実診療で対応する状況となっています。そんな現在、今までの自分の活動状況を公表した上で、非医療従事者の皆様にも伝えたいと思うことがあります。

 以下は医療従事者として、非医療者である皆様方へのお願いです。もちろん皆様が大変不安な状況にいらっしゃることは理解した上での発信です。

 医療崩壊の危機が叫ばれる中、その状況に向き合う医療者も不安定な状況で、それぞれのプロフェッショナリズムに支えられながらCOVID-19と向き合い、それぞれの立場で自身のできることを模索し対応している事を、まずは御理解頂ければと思っています。

 この私も、家族への感染伝播のリスクに対する妻の心配を考慮し、非流行地域でありながらも、2月上旬から中旬のダイヤモンドプリンセス号乗船後2ヶ月間は自宅には帰らず、自己隔離を続けています。その上で、地域医療の崩壊を防ぐべき、今必要なCOVID-19に対する診療を行っています。地域の医療体制は日に日に厳しさを増すとともに、COVID-19では無いにしても、「発熱」があるだけで診療に気を使う状況になっています。本日も隣接医療圏からの「発熱」を主訴にした患者の救急搬送要請や転院依頼が続いています。

 都市部では現在感染爆発の危機に直面し、緊急事態宣言がされるかに注目が集まっている事と思います。中山間地域である沼田医療圏でも、来たるCOVID-19による感染爆発に向け準備をしています。

 そんな中、先日、当院における体制整備のため若手医師と懇談を行いました。そこで得た若手医師の率直な言葉を記載します。

『僕は医師としては、今の状況で最前線で病気と戦うべきと思っています。でも、先生、ご存知と思いますが、僕にも家族が居るんです。子どもも、もう直ぐ1歳になります。妻から「終わりの見えない戦いは辛い」と言われました。』

 それでも彼は、妻との交渉で、今後3ヶ月を限度にCOVID-19対応を中心に行う事の了承を得てくれました。感染者が増え、発熱診療を彼が始めた場合は、彼の妻と1歳になる子どもは実家に帰り、彼は一人暮らしをする覚悟でいました。

 当院では感染管理の目的で、発熱や呼吸器症状を認める患者及びCOVID-19を疑う患者の対応を行う医師は、通常の疾患を管理する病棟主治医にはならず、完全に別のシフトを組む予定でいます。今後の体制整備に向け、信頼する若手である彼と話をした時、彼の苦悩に満ちた表情と、薄らではありますが目に涙を溜め自身の思いを表出する表情を見た時、本当に今の対応が良いのか悩んだ自分がいました。しかし、医療機関が少なく資源も限られる当医療圏を守らなければならないという使命感からは、彼の思いや苦悩を受け止めながらも、発熱対応する医師の配置を検討する自分が居ます。そして、後輩だけには責任を追わせる事はできないので、自分自身も発熱対応していますし、前述の通り病院宿泊を続けています。

 また、別の話になりますが、現在も発熱外来対応している看護師の話です。当院がCOVID-19の対応をする中心的病院であることは、公表しなくとも過疎地域である沼田医療圏では自明の事です。当院勤務の外来看護師の子どもが通学する小中学校では、まことしやかに「〇〇さん家はT病院勤務で、新型コロナウイウイルス感染症の人を診察しているらしいよ。〇〇さん家の子どもも感染の危険性はあるから気をつけて。」という話が仲間内でされているというのです。外来看護師本人はDMAT看護師として今の状況に向き合い、COVID-19に対しても対峙していきたいと思っているとのこと。でも自身の思いと別の次元で、その思いを砕かれる状況があるのです。医療者でありながらも、日々感染リスクに怯えながら、しかしやるべき事はやらなければならず、感染予防しながら発熱外来対応をしていた看護師。他の看護師よりも感染リスクが高いのは、本人が一番理解し、気を使って対応しています。その琴線が、何気ない一言や出来事でプツリと切れてしまったのでしょう。話をしながら涙ぐむ看護師がいました。

 医師にしても看護師にしても、それぞれの背景、家族があります。私たちの医療活動は決してボランティアで成り立つものではありません。個人個人の良心とプロフェッショナリズムで成り立っていると思っています。

 今、ここで自分たちの必要性を主張するつもりもありません。医療従事者なんだから割り切った対応をしろというご意見もあるかもしれません。そこに関しては受け止めるつもりでもおります。でも、一言言わせて頂いても良いなら、やはり私たち医療者も「人」であるという事を、おこがましいかもしれませんがご理解頂きたいと思っています。

 医療従事者それぞれが、自身の生活もありながら仕事をしています。その生活が安定しない限り、誰かのために働くことは正直困難です。家族の安定、安心があって、誰かのために働けると私は思っています。そして、皆様が一般生活を過ごされている中で感じている新型コロナウイルス感染への不安と同じように、医療従事者は自分達の感染リスクが一般の方々よりも相対的に高い事を理解するとともに、自身が感染する事への怖さも抱えながら診療をしています。何とか自身を保ちながら。

 COVID-19に対する、非医療者である皆様の不安は分かりますが、不安の裏返しかも知れませんが、今だからこそ、どんな状況においても、どうか医療従事者を責めないで頂ければと思います。医療従事者は皆、一生懸命に今の困難に立ち向かおうとしています。ですから、そんな医療従事者を不安に落とすような発言は控えて頂くよう、お願いできないかなと思っています。

 私は立場上も自身の科に所属するスタッフ、部門スタッフを守る責任があります。医療活動は個人のパフォーマンスだけでなく、チームとしてのパフォーマンスで成り立つものと思っています。個人のパフォーマンスはチームのパフォーマンスにつながります。今、医療の現場はギリギリの状態で、それぞれの医療従事者の良心とプロフェッショナリズムで成り立っていると思っています。

 皆様も生活においてはCOVID-19拡大により大変な状況があると思います。ですから、皆様に何かしてくださいというお願いではありません。ただ、少しでも医療従事者への精神的及び言動的配慮を頂ければ幸いです。何とかこの状況を乗り越え、未来につなげられればと思っています。

 

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