「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その13) −第3部 学校用 1 校長用(園長用)− を再び(まとめに代えて1)

  • 2017.05.07 Sunday
  • 23:33

JUGEMテーマ:学問・学校

 

 これまで、新ガイドラインの解説を書いてきましたが、校長・園長用の部分の紹介が簡単すぎました。この部分が新ガイドラインの中心になる部分ですので、これから数回にわたって、まとめをかねて、校長用の中身を解説して参ります。この部分について、平成16年度版(LD,ADHD,高機能自閉症のガイドライン)との比較など、私的な意見を書き込むことになると思います。私見であることをまずお断りします。

 

 

1 特別支援教育を柱とした学校経営

 校長用の部分は15ページで、コーディネーター用が4ページでした。学校用の最初には、以下のように、特殊教育から特別支援教育へ替わった平成19年4月の初中局長通知の抜粋が挙げられています。今日の特別支援教育制度の最も基礎となる通知です。

○ 校長の責務
 校長(園長を含む。以下同じ。)は,特別支援教育実施の責任者として,自らが特別支援教育や障害に関する認識を深めるとともに,リーダーシップを発揮しつつ,次に述べる体制の整備等を行い,組織として十分に機能するよう教職員を指導することが重要である。
  また,校長は,特別支援教育に関する学校経営が特別な支援を必要とする幼児児童生徒の将来に大きな影響を及ぼすことを深く自覚し,常に認識を新たにして取り組んでいくことが重要である。
○ 特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組
(1) 特別支援教育に関する校内委員会の設置
(2) 実態把握
(3) 特別支援教育コーディネーターの指名
(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用
(5) 「個別の指導計画」の作成
(6) 教員の専門性の向上
○ 特別支援学校における取組
(1) 特別支援教育のさらなる推進
(2) 地域における特別支援教育のセンター的機能
(3) 特別支援学校教員の専門性の向上
○ 保護者からの相談への対応や早期からの連携
○ 厚生労働省関係機関等との連携
        ※ 特別支援教育の推進について(平成19年文部科学省通知)より

 

1.学校経営の柱に位置づけよ
 最初に、「校長が作成する学校経営方針の柱の一つとして、特別支援教育の充実に向けた基本的な考え方や方針を示すことが必要です。」と書かれています。そして、4つの例が挙げられています。
幼稚園と小中学校の学校経営方針に挙げられることは非常に大きな事だと思います。是非、それぞれの校長先生の見識を披瀝して頂くことが当たり前の事として普及して欲しいと思います。
また、15ページで、通級担当教員と特別支援学級担任の「特別支援学校教諭免許状」の取得を促進することが明記されています。このことも大きな変革です。校長の責務の最初の方に書かれている点も注目です。

 

2 特別支援教育に関する委員会
 いわゆる校内委員会について、平成16年度版では正式の制度が用意されていなかったため主に「校内委員会」と呼ばれていました。これは非常に良くなかったと思います。制度設計上、名称も無い委員会はダメだったと思います。せめて仮称でも委員会名を付けておく必要があったと思います。
 平成19年の初等中等局長通知で「特別支援教育に関する委員会」という正式名称が提案されたのですが、平成11年以降ずっと「校内委員会」という名称が使われてきたためか、名称の変更に至りませんでした。
新ガイドラインでも、「特別支援教育に関する委員会」という名称が使われていますが、殆どの所で「校内委員会」という言葉が一人歩きしています。もうそろそろ、正式には「特別支援教育に関する委員会」だが、我が校では略して「特支委員会」、「支援委員会」、「特別支援委員会」「特別支援教育委員会」と呼んでいるなどの呼称の決定を行う必要があると思います。移行期である現在、「特別支援教育に関する委員会(校内委員会)」という用法を丁寧に用いる必要があると思います。煩雑ですが、この項では、そのように用います。なお、平成19年以前については、歴史的経緯から「校内委員会」という名称のみを用いることもあります。

 最初に「校内委員会」が出現したのは、「学習障害児の指導について(報告)」が出された平成11年に遡ります。校内委員会という曖昧な名称で、LD等の疑いのある子どもをピックアップして、専門家チームの判断を仰ぐか否かを協議する委員会でしたので、専ら診断面の役割だったと言えます。
 平成16年度版では「校内における全体的な支援体制を整備するため校内委員会を設置します。」となり、実態把握と支援体制の核としての役割へと変化しました。名称について「校内委員会の名称には,特別支援教育委員会,校内支援委員会,個別支援委員会等各学校の実態に応じた名称が考えられます。」と書かれていたのですが、全体的にはガイドライン自体が「校内委員会」という名称を多用していたため、結果的には名称の変更に失敗しています。今回も、ほぼ同じで、「校内委員会」という名称を多用していますので、その点は良くないと思います。ただし、平成19年の初等中等局長通知により、正式名称の根拠があるわけですので、今回こそ、名称の整理を行う必要があるでしょう。

 「校長のリーダーシップの下,全校的な教育支援体制を確立し,教育上特別の支援を必要とする児童等の実態把握や支援内容の検討等を行うため,特別支援教育に関する委員会(校内委員会)を設置します。」と定義しています。すっきりしていて、診断で無く、実態把握と支援内容の検討が主な任務であることが明記されています。残念ながら、正式名称で書かれているのはこの部分だけでした。

 総論の部分ですでに「医師による障害の診断がないと特別支援教育を行えないというものではなく,児童等の教育的ニーズを踏まえ,後述の校内委員会等により『障害による困難がある』と判断された児童等に対しては,適切な指導や必要な支援を行う必要があります。」と書かれているように、『障害による困難』の判断は特別支援教育に関する委員会(校内委員会)が行う旨、明確にされました。
 この点について、まとまって述べてあるのは18ページの脚注9です。以下、特別支援教育に関する委員会(校内委員会)に関する部分を抜粋します。
 「特別支援教育は,学校教育法第81条第2項各号に記載されている障害種のみならず,あらゆる障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を指します。法律上は,障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとされていますが,これは必ずしも,医師による障害の診断がないと特別支援教育を行えないというものではなく,児童等の教育的ニーズを踏まえ,校内委員会等により『障害による困難がある』と判断された児童等に対しては,個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成を含む適切な支援を行う必要があります。」と書かれています。
 学校教育法第80条で特別支援学校の対象の障害を示し、第81条では特別支援学級の対象者の障害を示しています。81条では、知的障害者、肢体不自由者、身体虚弱者、弱視者、難聴者、その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの(言語障害、自閉症・情緒障害)という障害種だけでなくて、あらゆる障害と書いてある点も注目されます。
 通級の対象となっている学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)が含まれているのはもちろんのこと、平成19年3月15日の特別支援教育課からの通知 
で明らかなように、少なくとも発達障害者支援法の対象者は全て、従来の特殊教育の対象者に加えて、特別支援教育の対象になることが可能です。
 個人的な意見ですが、特別な教育的ニーズを有する児童生徒で、これらの障害種に入らない、不登校や境界線級(ボーダーライン)の知能の子どもの一部にも「学習上又は生活上の困難」が顕著な事例が居ることから、もう少し枠を広げた方が良いと思っています。今後、是非検討して頂きたいところです。

 これらの点は随分改善されたのですが、専門家チームの位置づけが残っているため、大きな矛盾があります。15ページの校内委員会の説明で、「○障害による困難やそれに対する支援内容に関する判断(脚注6)を,専門家チームに求めるかどうかの検討。」が挙げられ、脚注6では、「障害の有無の判断を校内委員会や教員が行うものではないことに十分留意する必要があります。」と書かれています。
 この部分の解釈は難しいのですが、私は以下のように整理しています。本当は、反省して、診断のための専門家チームという制度を廃止した方が良いと思います。現状では、過去の矛盾が残っているので、次のように解釈しています。
   「障害の有無の判断」は専門家チームか、専門医など。【診断的側面】
   「障害による困難の判断」は特別支援教育に関する委員会(校内委員会)が行う。【学習及び生活上の困難、つまり行動面、適応面、学習面など】
   ※特別支援教育の対象とするか否かは、診断ではなくて、教育的ニーズの問題なので、教師が最も専門とする問題である・・・と考えると整理出来ると思います。


 構成員ついては、スクールカウンセラーやスクールケースワーカーの役割が明記されていない点が気になりますが、全ての学校に配置されていない現状では止むを得なかったのかも知れません。

 特別支援教育に関する委員会(校内委員会)の名称ですが、平成16年度版の名称にコメント付けてみます。
 特別支援教育委員会;正式名称として良いと思います。難点は、市町村教育委員会や教育支援委員会と名称が似ていて紛らわしい面があります。
 校内支援委員会;『校内教務委員会』などと呼ぶことがないのと、従来の曖昧な名称の雰囲気を残すので、望ましくないと思います。
 個別支援委員会;平成16年頃はLD等の指導は、個別指導が基本だと誤解されていた名残だと思います。個別指導に限定するのは良くないので、使わない方が良いでしょう。

 長くなると使いにくいので、「特支委員会」、「特別支援委員会」、「教育ニーズ委員会」なども考えられると思います。「各学校の実態に応じた名称」とのことですので、特別支援教育に関する委員会(○○委員会)と併記して、各学校で通じやすい名称を決めて行くことが必要だと思います。それらがいろいろ出てくると、望ましい名称に収斂して行くと思います。
 少なくとも、訳の分からない、内容を示していない、「校内委員会」という名称は使わない方が良いと思います。


 詳しくは、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン 本文をご覧ください。

    

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