発達障害の特性という考え方 2

  • 2017.03.06 Monday
  • 00:00

JUGEMテーマ:学問・学校

 

前回の投稿の続きを書きました。

 

4.「特異的症状」と「非特異的症状」

 

 前述のように、現在、発達障害関係で語られる「特性」は、診断するときに注目されている症状を中心に語られています。この点について、もう一つ押さえておく必要があるのが、「特異的症状」と「非特異的症状」という区別です。
 病気と言ってもいろいろな症状があります。普通の風邪を引いても、インフルエンザに罹っても、どちらも熱が出ますし,咳もでます。明らかにインフルエンザだけで出てくる症状は、インフルエンザ・ウィルスの存在です。最近はウィルスの型を検査して、それから抗ウィルス薬の投与が行われる様になりました。
 ウィルスの存在は、そのインフルエンザ型だけに認められる「特異的症状」と言えます。普通の風邪では、出てこない症状(病気の特徴的な状態)です。一方、熱や咳は、いろいろな病気で出現する特異的ではない「非特異的症状」です。
発達障害のどれかの診断が付く場合、例えば「落ち着きがない」という症状があっても、どのタイプか決める事は困難です。幼くても「落ち着きがない」という状態を示しますし、自閉症の子も多くは落ち着きがないし、学習障害の子も落ち着きがない子が少なくありません。分娩室の前で出産を待っている父親も落ち着きなくウロウロすることがあります。
 ある教科の、それも一部が難しいという状態も、多くの人に認められる状態です。(もちろん、全般に難しい人もいるのです。)ある教科の重要な基礎が未学習だと,関連する部分だけ出来ないという現象も起こり得ます。
 自閉症児が顕著に目を合わせない現象(視線回避;gaze avoidance) は、他の障害では認めることが難しい程度ですし、乳児期の泣き声の感情的差異の少なさも他の障害では認め難いため、個人的見解ですが、「特異的症状」と思っています。
 昔の、1万人に3〜4人という出現頻度の時代の自閉症児は、上記のような理由で、特異的症状があると考えています。以下この小論では、そのような事例を除外した上で、以下、「いわゆる発達障害児」とLD,ADHD, 自閉症の一部を呼ぶことにします。

 

5.学習障害児の検査はあるのか?

 

 このように、特異的症状という観点から考えると、いわゆる発達障害児の定義は、「非特異的症状」で定義されています。そのため、例えば,学習障害児を判別するテストは、随分昔から試みられていますが、決定打は今でも出来ていないのです。なぜなら、障害の定義そのものが不明確ですので、検査を作りたくてもその基準がないのです。「非特異的症状」であるその障害の特性は,他の子どもより「著しい」ので症状として認められるという宿命を持っています。どの程度だと「著しい」と言えるか、あくまで程度問題なので決める事が元々困難なのです。
 強いて、著しいという基準を設けるとすると、知的障害のように、標準値からの逸脱の程度(平均からどのくらい離れているか)という統計的基準位しか定義しにくいのです。もし知能検査のように統計的な基準を用いるとしたら、各年齢の中での分布を調べて、それぞれ異常(著しい)という範囲に入る割合は2.5%となります。
 さらに、知能の検査項目も大きな問題がありますが、行動上の特徴を表す尺度となると、様々な次元がありますし、それらを物差しにするための項目をどう設定すれば良いかという大きな問題もあります。例えば,「落ち着きがない」という次元を不注意の程度と決めても、幼児の不注意と中学生の不注意、大人の不注意をどういう項目で測定するか,簡単ではありません。例えば、周囲の大人(教師や親)が不注意ないしは落ち着きがないという印象を得ている程度で評定していますが、その印象を確からしくする手続きは、なかなか難しいのです。
 このように、非特異的症状で定義している故に、学習障害児やADHDの検査は作り難いのです。何か検査はありませんか?と聞かれるのですが、これぞ有用な検査だと言えるものは、私には見つかっていません。例えば、K-ABCという検査が学習障害児の検査であるかの様に思われた時期がありましたが、元々知能検査の一種でした。スクリーニングの検査が発売されましたが、あるものは、13%が該当するという粗いものでした。
 今では、学習障害児は非特異的症状で定義されているので、検査を作るのが困難なのです。実態を把握したければ、通常の学習の時、従来はテストで○を数えて、教えたことがどの程度定着したかを計るが、学習障害については、×になるプロセスを分析して、どのような考えで×になったかを検討することが大事でしょうと答えています。

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