発達障害幼児の出現率について(その3)

  • 2012.04.29 Sunday
  • 16:54
 

<小枝班>「軽度発達障害児の早期発見と対応システムおよびそのマニュアル開発に関する研究」

 小枝の「軽度発達障害」概念に関する論述(4月24日のブログに紹介)は、論理的で非常に説得力があると思う。是非、熟読されたい。

 さて、このプロジェクトでは、軽度発達障害を次の4つの状態像を総称するものとしている。

1.学習障害

2.注意欠陥/多動性障害(ADHD)

3.高機能自閉症やアスペルガー症候群を包含する高機能広汎性発達障害(HFPDD)

4.軽度知的障害

 文科省では、従来、LD,ADHD,高機能自閉症児と言っていたので、それよりも軽度知的障害が加わっていて、卓見であると思う。

 3歳児については、以下の5項目を観点に3歳児健診で調査を行っている。

       1.多動性               一般の3歳児でも50%を越える

2.旺盛な好奇心         一般の3歳児でも50%を越える

3.破壊的な関わり              

4.不適切な関わり              

5.強い癇癪   
         

 結果は、ADHDなどの幼児がこれらの項目で高得点をあげているが、同時に多動性と旺盛な好奇心は一般の3歳児でも50%を越える値を出しており、この研究の要約では3歳児のなかでどれくらいの頻度が軽度発達障害児であるかを示していない。恐らく、この試みでは軽度発達障害児を抽出できなかったものと推察される。

 鳥取県で行われた5歳児健診での調査では、以下の出現率が挙げられている。

2 鳥取県での5歳児健診における出現率

ADHD(疑い含む)

37

3.6

PDD(疑い含む)

19

1.9

学習障害(疑い含む)

1

0.1

境界域の知的発達あるいは軽度精神遅滞が疑われる

37

3.6

合計

94

9.3


3  試算

LD,ADHD,PDD

57

5.6

   

 

 

 

 

 

 「栃木県の5歳児健診(1056名)でも8.2%という出現頻度であった。また、こうした児の半数以上が、3歳児健診では何ら発達上の問題を指摘されていなかった。」と述べ、5歳児健診の必要性を強調した報告となっている。

 これらのデータが、1000人以上を小児科医が実際にみて調べたもので、価値があると評価しているが、疑いを含む診断ばかりで、どの程度が疑いを除いた数値なのかも明らかでない。疑いを含むと但し書きをしていても、9.3%という数値だけが独り歩きをするのは火を見るより明らかであり、せめて疑いの部分がどのくらいかは明らかにされたいところである。

 表3は、筆者が表2からLD, ADHD, PDD (疑い含む) の出現率を試算したものである。知的障害を除くと5.6%となる。

 これらは、文科省の6.3%という(独り歩きしている)数値に近いといえば近いが、いわゆる発達障害児は、その状態像から、加齢と共に出現率が低下する傾向があると推定されるので、幼児期はもっと高い値が予想される。その意味では、9.3%はある意味いい値である。

 しかし、「糸島プロジェクト」では、3歳時にほぼ全数を把握していたという精度に比べて、小枝班の報告は、5歳児健診で小児科医が疑わしい幼児をこれだけ見つけましたというだけの情報で、確たる出現頻度の調査とは言い難い。

 3歳時の調査が難しいというのは、おおぐくりの観点を示しただけの調査なので、定型発達をしている子どもと区別がつかなかったものと推察される。少なくとも神尾班では1歳半でも何らかの区別が出来たわけなので、3歳では区別できないで5歳だと区別できるという結果は納得し難い。もし、それが言えるならば、「軽度発達障害」は生まれつきの脳機能の障害ではなくて、生まれてからの経験が原因の障害という事になるのではなかろうか?(この点を、単なる子育て論に矮小化することなく、今後さらに検討する必要があると筆者は思っている)

 最後に、「糸島プロジェクト」の数値は、低すぎるという感想をもつ方が多いと思う。これは、あくまで、個人的な印象である。今日の入門書やマスコミの情報でいう「相場」と乖離しているという印象である事を認識する必要がある。昔、自閉症児の疫学調査が英国で行われて、その時点では1万人に3〜4人という数値が出た。それを読んで、筆者も「少ないな」という「印象」を受けた。厳密に定義して詳しく調べると、臨床的・実践的印象よりも少なくなるのは当然である。なぜなら、実践的には自閉症と自閉的傾向などがない交ぜになって、何となくの量的イメージを得ているからである。例えば、脳性まひ児やダウン症児は、沢山居る印象だが、その出現頻度は約1000人ひとりの割合である。また、特別支援学校に在籍している児童生徒は学齢児の0.6%である。それに比べると、「糸島プロジェクト」の発達障害1.38%、障害児4.3%は随分多い数字である。

このデータは、平成14年の文科省の6.3%が高すぎることを示唆しているものと思われる。特別支援学級設置校長会の調査でも平成21年に3.9(資料 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」協力者会議 資料7 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/089/shiryo/attach/1315881.htm) の特別支援教育の対象児という調査など、必ずしも6.3%は絶対的な数値ではないことを銘記する必要があるだろう。特に、年齢によって変わってくる現象だけに、平成24年に再調査が計画されている再調査では、少なくとも学年別の出現率を出して頂きたい。

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