「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その16:最終回) −平成16年版との比較から−(全体のまとめ)

  • 2017.05.24 Wednesday
  • 00:03

JUGEMテーマ:学問・学校

 

 平成16年の「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」(平成16年版と略記)と平成29年に出された「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」(以下、新ガイドラインと略記)は、どちらも特別支援教育の体制整備のためのガイドラインですが、大きな違いがあります。その主なものをまとめてみます。

 

1.平成16年版は、題目にもあがっているように「LD,ADHD,高機能自閉症」だけで、障害のある児童生徒の一部に特化したガイドラインでした。それが、今回「障害のある幼児児童生徒」すなわち特別支援教育の対象となる子ども全てを対象としている。これは非常に大きな違いです。

 

2.平成16年版の内容は、平成11年7月2日に学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議から報告された「学習障害児に対する指導について(報告)」と、「特別支援教育体制推進事業」(脚注)で整備してきた仕組みをまとめた内容でした。モデル事業として推進され、例えば学生支援員という教員養成学部の学生を取り込む試みなど、正式の制度設計というよりも、モデル事業の中での工夫が基礎になり、オプション的に加えられていったという経過をたどりました。制度改正がなされた平成19年、「特別支援教育の推進について(初中局長通知)」が出されて、それらの試みの多くが正式の役割・制度となっていきました。ただし、学生支援員など消えていったものもあります。
 平成16年版は、正式の制度発足の前に書かれているため、モデル事業の集大成という色彩が強く、制度としては背景を欠いていたため、特別支援教育コーディネータや専門家チームに多くの役割を付し、体制整備としては不十分なものでした。

 

3.新ガイドラインは、平成16年版を踏襲しているように見えますが、10年余りの実践の裏打ちがあるため、使える仕組みと使えない仕組みの違いが分かってきて、より着実な制度設計になっています。ただし、平成16年版を踏襲しているスタイルであるため、その弊害を払拭するにまでは至っていません。例えば、専門家チームで障害の判断を行うことは、現在ではほとんど無く、医師の診断が主に行われています。そうなると、本当は専門家チームの存在意義はかなり無くなっていると言えるでしょう。

 

4.障害者の権利条約批准とそれに伴う法・制度改革にともなう変化に対応するために、大幅に内容が変わっています。新ガイドラインでは、特別支援教育コーディネータの職務の一部に合理的配慮に関する合意形成が加えられた事は特筆すべきことでしょう。また、全体に、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の通常の学級を中心に述べられており、インクルーシブ教育システムの構築を目指したガイドラインになっています。

 

5.これらの変化を受けて、平成16年版の個別指導を中心とした発想から、新ガイドラインでは学校内の組織的取り組み、とりわけ学校経営や学級経営としての取り組みという発想へと転換しています。

 

6.学校全体の取り組みとして展開するために、校内の役割を整理していることが注目されます。また、それらの諸役割を統括する視点が重視され、それが校長・園長の役割について多く書かれるという姿に現れています。このことは、校長の責任が増したと言うより、学校全体でチームとして取り組むことが重視され、勢い、それらをマネージメントする校長の役割として書かれることが増えたと考えられます。その部分を校長だけでなく、教職員全員がよく読んで、チームとして機能するように運営することが求められていると思います。

 

7.「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」がチームでの取り組みと、本人・保護者の参画に重要な役割を果たすことになりました。このことは、「専門家チーム報告書」(絵に描いた餅だったか?)から、個別の教育支援計画の義務化へと、現実的な改善が図られています。(2016年に話題になった「個別カルテ」は、これらの義務化で実現したと推察されます)。

 

 以上みてきましたように、平成16年版に比べると非常に改善されたガイドラインと言う事ができるでしょう。更なる改善のために、学校全体での組織的取り組みの成果を積み重ねる必要があると思います。

 

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(脚注)平成12年度から始まった「学習障害の判断・実態把握体制等に関するモデル事業及び巡回相談事業」と、平成15年度からそれを引き継いだ、「特別支援教育推進体制モデル事業」として小・中学校におけるLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒への総合的な教育支援体制の整備を図るため,校内委員会や専門家チームの設置, 特別支援教育コーディネーターの養成, 巡回相談等を実施。平成16年度からは,小・中学校におけるLD・ADHD・高機能自閉症等を含めた障害のある児童生徒への総合的な支援体制の一層の整備を図るため、上記の事業内容に加えて、都道府県や地域における行政部局横断型の組織として特別支援連携協議会の設置、個別の教育支援計画の策定、盲・聾・養護学校のセンター的機能の在り方に関する研究を実施してきた。

 

 

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その15) −第3部 学校用 1 校長用(園長用)− を再び(まとめに代えて3)

  • 2017.05.13 Saturday
  • 08:54

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 校園長用の残りの部分をまとめます。

 

5.教職員の理解推進と専門性の向上
 学校内の研修の促進と学校外の研修参加を促すことを校長に求めています。専門性の向上としていますが、何の専門性かという点が問題です。

 私的な意見ですが、通常の担任等にとっては、まず、教科教育の専門性を高め、次いで、発達に応じた教授法の専門性を高め、個々の子どもの多様性に応じる教授方法という専門性を高め、最後に、障害に応じた対応という面についても力をつけるという順番がありそうに思います。
 特別支援学校教諭の場合には、障害に応じた対応が出来る様に、まず、個々の子どもの多様性に応じる対応の仕方と、種々の障害の違いに応じた対応の仕方を学ぶことが必要になります。そこで「特性に応じた指導」という考えが出てくるのですが、特性(
そのものだけが持つ性質;すなわち他と異なる特徴)だけが強調されている昨今の風潮は問題です。トータルに人として、同時に、今居る状況との交互作用の中で、かつ、その人の発達の経過の中で理解し、指導・支援していく必要がある。ということは、特性以外の、人として共通にもつ諸機能とその発達を見ないで指導・支援することはできません。その部分は、一般の教育とほぼ一致している、その部分をみなければならないと思います。その意味で、今回のガイドラインは、前回の特性重視、個別指導重視から大きく改善されていると思います。
 インクルージョンを推進することに賛成だが、特別支援学校など障害児が複数いて、先生方も複数いて、先輩から職場で学ぶことが出来る体制は、重たい子を見るだけで無く、教職員を育てる上でも大事だと思います。これは、単に、現状を維持する事ではありません。簡単なことではありませんが、今後、インクルーシブ教育を推進するためには、午前中にインクルーシブな状況で学び、午後は特別支援学校で学ぶという形態を取ることなど、いろいろ工夫が必要だと思います。

 

6.教員以外の専門スタッフの活用
 特別支援教育支援員のことが専門スタッフの第一に挙げられています。中には、専門性が高い方もいますが、支援員の多くは、率直に言って専門スタッフというよりも、補助的な役割を持つことが多いと思います。支援員が活きるためには、担任や管理職が旨くリードする必要があります。また、研修をもっと充実させる必要があるでしょう。
 他に、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、看護婦、就労支援コーディネーターについて述べられています。管理職としては通常の教諭とこれらスタッフとの協働がうまくいくようコントロールする役割が大事になります。

 

7.保護者との連携の推進
 最初に保護者への理解推進が挙げられている点が注目されます。PTAなどを通じて保護者全体が、障害のある子どもたちに関する理解や、特別支援教育に関する理解を推進していくことが、ひいては、子どもたちの障害児理解へと結びつきますので、今後特に重要になってきます。
 個別の教育支援計画の作成と活用に当たって、保護者の参画は不可欠です。この部分が拡充され、整理されたことは大事な事だと思います。

 

8.専門家・専門機関との連携の推進
 巡回相談やセンター的機能の活用、医療、福祉、労働等の関係機関との連携も述べられています。脚注12には、平成24年の通知が紹介され、福祉関係の「個別支援計画」等との関係や放課後デイとの関係などについても触れられています。


9.進学等における適切な情報の引継ぎ
 個別の教育支援計画の内、進学等の移行期に作成されるものを「移行支援計画」と呼びますが、ここでは、個別の教育支援計画として、引継ぐように書かれています。その際、個人情報保護に努めるようにと書かれています。
  また、高校受験においても合理的配慮が必要な事例には、積極的に周知させるようと書かれています。これらの記載では、事例も挙げられおり、理解を深めやすく書かれています。


 今回は、簡単に内容をまとめましたが、よくまとまっているので、本文をご覧頂きたいと思います。新ガイドラインの全体像を把握する目的であれば、校長用の部分を読むことは良いと思います。


詳しくは、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン 本文をご覧ください。
 

  

新旧 ガイドラインにおける特別支援教育コーディネーターの役割比較

  • 2017.05.10 Wednesday
  • 17:45
平成29年3月 平成16年
発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン 小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン (試案)
特別支援教育コーディネーターは,学校内の関係者や教育,医療,保健,福祉,労働等の関係機関との連絡調整,保護者との関係づくりを推進する
合理的配慮の合意形成,提供,評価,引継ぎ等の一連の過程において重要な役割を担う
特別支援教育コーディネーターは,学校内の関係者や外部の関係機関との連絡調整役,保護者に対する相談窓口,担任への支援,校内委員会の運営や推進役といった役割を担っています。
1.学校内の関係者や関係機関との連絡調整 〈校内における役割〉
(1)学校内の関係者との連絡調整 ○校内委員会のための情報の収集・準備
校内委員会の企画・運営を担い,協議を円滑にできるようにする ○担任への支援
また,日頃から校内で教育上特別の支援を必要とする児童等の情報を収集し,必要に応じ,特別支援教育支援員,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等、学内専門家と繋ぐ ○校内研修の企画・運営
(2)ケース会議の開催 〈外部の関係機関との連絡調整などの役割〉
ケース会議では,児童等の状況の共有や,課題の明確化,今後の具体的な支援内容や方針の確認 ○関係機関の情報収集・整理
(3)個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成 ○専門機関等への相談をする際の情報収集と連絡調整
校内委員会で個別の教育支援計画及び個別の指導計画を作成 ○専門家チーム,巡回相談員との連携
(4)外部の関係機関との連絡調整
特別支援教育コーディネーターは,巡回相談員や専門家チームとの連絡調整の窓口となる
特別支援学校(センター的機能)やその他の教育,医療,保健,福祉,労働等の関係機関との連絡調整
(5)保護者に対する相談窓口 〈保護者に対する相談窓口〉
各学校において,一般的に,保護者と主に連絡を行う教員は,児童等が在籍する学級の担任だが,コーディネーターも窓口になる
2.各学級担任への支援
特別支援教育コーディネーターは,各学級担任からの相談に応じ,助言又は援助等の支援を行う
(1)各学級担任からの相談状況の整理
(2)各学級担任とともに行う児童等理解と学校内での教育支援体制の検討
(3)進級時の相談・協力
3.巡回相談員や専門家チームとの連携
(1)巡回相談員との連携
(2)専門家チームとの連携
4.学校内の児童等の実態把握と情報収集の推進
学校内の児童等の実態を把握するための校内体制構築や,研修の実施を推進
校内委員会において,全ての教職員を対象とした早期支援のための学校内の研修の計画や,学習面又は行動面において困難のある児童等に係る困難の状況の実態把握のための参考指標の使用等を提案

 平成16年度版については項目のみ書きました。この表の項目だけだと役割は少ないように

見えますが、当時は、役割が整理されていませんでしたので、非常に多くの役割が与えられ

ていました。今回のガイドラインでは、差別解消法への対応においても役割が増えましたが、

具体的に役割が示され、実質上は役割が分担され、整理されたと言えそうです。

 

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その14) −第3部 学校用 1 校長用(園長用)− を再び(まとめに代えて2)

  • 2017.05.10 Wednesday
  • 15:09

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3.特別支援教育コーディネーターの指名と校務分掌への位置付け
 コーディネーターの役割については、「特別支援教育コーディネーターは,各学校における特別支援教育の推進のため,主に,校内委員会・校内研修の企画・運営,関係機関・学校との連絡・調整,保護者の相談窓口等の役割を担います。」と述べられており、ほぼ平成16年度版と同じように書かれています。しかし、二つの点で、変化しています。
 一つは、「また,校長は,特別支援教育コーディネーターが合理的配慮の合意形成,提供,評価,引継ぎ等の一連の過程において重要な役割を担うことに十分留意し,学校において組織的に機能するよう努める必要があります。」という文言が加えられている点です。障害者差別解消法への対応もコーディネーターの役割に加えられた事は、仕事が増えすぎていかがなものかとも思いますが、障害児への対応で、親御さんとも関係がないと難しいので、コーディネーターに役割を発揮して貰うことにある種の合理性があるとも思います。コーディネーターの先生を複数指名することも可能ですので、仕事量など考慮して頂く事が必要と思います。
 第二に、文面上というより、ガイドラインの端々に、担任等への支援・指導を行うことが書かれている点は、目立ちませんが、大きな変革です。
 また、(校長は)「専ら特別支援教育コーディネーターの業務に従事できるような配慮を行うことが望まれます。」と、専任化にまでは至りませんでしたが、運用上で、コーディネータの業務に当たる時間を確保ないし配慮することが求められている点は大きいと思います。
 校務分掌での位置付けについても書かれています。注目を引くのは、既存の生徒指導部や学習指導部等の構成員を指名するなど、コーディネーターの役割が校内の諸組織と有機的に連携することを想定しています。このような、学校経営とのリンクが重視されるため、校長用で具体的な対応や配慮を書き込んでいるのだと思います。

 

4.個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成(脚注9)と活用・管理
 平成16年度版では、校長用と担任用に個別の教育支援計画が書かれ、専門家チームの項に、「判断と助言のまとめ方」の中身は今日の個別の教育支援計画に近いものでしたが、直接、個別の教育支援計画(平成14年末〜:20ページ参照)には触れられていませんでした。
 今回のガイドラインでは、個別の教育支援計画と個別の指導計画の位置づけが大きくなったと思います。
 脚注9に重要なことが書かれています。それを抜粋すると以下のようになります。
−−−脚注9−−−−−−−
 各学校において行う特別支援教育の対象は,特別支援学級はもとより,通常の学級を含む,全ての教育上特別の支援を必要とする児童等であり,特別支援教育は,学校教育法第81条第2項各号に記載されている障害種のみならず,あらゆる障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を指します。法律上は,障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとされていますが,これは必ずしも,医師による障害の診断がないと特別支援教育を行えないというものではなく,児童等の教育的ニーズを踏まえ,校内委員会等により「障害による困難がある」と判断された児童等に対しては,個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成を含む適切な支援を行う必要があります。
 また,次期学習指導要領においては,通級による指導を受ける児童等及び特別支援学級に在籍する児童等に対する指導や支援が組織的・継続的に行われるよう,「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を全員作成することとされています。
−−−引用終わり−−−−−
 19ページに抜粋が挙げられていますが、次期小学校学習指導要領に「エ 障害のある児童などについては,家庭,地域及び医療や福祉,保健,労働等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で児童への教育的支援を行うために,個別の教育支援計画を作成し活用することに努めるとともに,各教科等の指導に当たって,個々の児童の実態を的確に把握し,個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする。特に,特別支援学級に在籍する児童や通級による指導を受ける児童については,個々の児童の実態を的確に把握し,個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し,効果的に活用するものとする。」(中学校も同様)と書かれています。

 個別の教育支援計画と個別の指導計画を義務化したことであり、画期的なことです。平成28年5月頃に、教育再生実行会議へ文科省が提案した仮称「個別カルテ」が正式には個別の教育支援計画として制度化されたことを意味します。「個別カルテ」という屋上屋を重ねるような提言に危惧を懐いていましたが、本来の位置に納まったと思います。
  さらに、20ページの囲み記事で「『個別の教育支援計画』は『個別の支援計画』に含まれるもの」という理解が重要と指摘しており、これにより、平成14年閣議決定の障害者基本計画の省庁間にまたがる「個別の支援計画」という形で、障害児者の情報が繋がっていく姿へ近づくと思います。今日福祉分野で「個別支援計画」と呼ばれるものと、教育分野の「個別の教育支援計画」は本来、同じものなのだという認識が大切です。

 

 詳しくは、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン 本文をご覧ください。
 

  

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その13) −第3部 学校用 1 校長用(園長用)− を再び(まとめに代えて1)

  • 2017.05.07 Sunday
  • 23:33

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 これまで、新ガイドラインの解説を書いてきましたが、校長・園長用の部分の紹介が簡単すぎました。この部分が新ガイドラインの中心になる部分ですので、これから数回にわたって、まとめをかねて、校長用の中身を解説して参ります。この部分について、平成16年度版(LD,ADHD,高機能自閉症のガイドライン)との比較など、私的な意見を書き込むことになると思います。私見であることをまずお断りします。

 

 

1 特別支援教育を柱とした学校経営

 校長用の部分は15ページで、コーディネーター用が4ページでした。学校用の最初には、以下のように、特殊教育から特別支援教育へ替わった平成19年4月の初中局長通知の抜粋が挙げられています。今日の特別支援教育制度の最も基礎となる通知です。

○ 校長の責務
 校長(園長を含む。以下同じ。)は,特別支援教育実施の責任者として,自らが特別支援教育や障害に関する認識を深めるとともに,リーダーシップを発揮しつつ,次に述べる体制の整備等を行い,組織として十分に機能するよう教職員を指導することが重要である。
  また,校長は,特別支援教育に関する学校経営が特別な支援を必要とする幼児児童生徒の将来に大きな影響を及ぼすことを深く自覚し,常に認識を新たにして取り組んでいくことが重要である。
○ 特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組
(1) 特別支援教育に関する校内委員会の設置
(2) 実態把握
(3) 特別支援教育コーディネーターの指名
(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用
(5) 「個別の指導計画」の作成
(6) 教員の専門性の向上
○ 特別支援学校における取組
(1) 特別支援教育のさらなる推進
(2) 地域における特別支援教育のセンター的機能
(3) 特別支援学校教員の専門性の向上
○ 保護者からの相談への対応や早期からの連携
○ 厚生労働省関係機関等との連携
        ※ 特別支援教育の推進について(平成19年文部科学省通知)より

 

1.学校経営の柱に位置づけよ
 最初に、「校長が作成する学校経営方針の柱の一つとして、特別支援教育の充実に向けた基本的な考え方や方針を示すことが必要です。」と書かれています。そして、4つの例が挙げられています。
幼稚園と小中学校の学校経営方針に挙げられることは非常に大きな事だと思います。是非、それぞれの校長先生の見識を披瀝して頂くことが当たり前の事として普及して欲しいと思います。
また、15ページで、通級担当教員と特別支援学級担任の「特別支援学校教諭免許状」の取得を促進することが明記されています。このことも大きな変革です。校長の責務の最初の方に書かれている点も注目です。

 

2 特別支援教育に関する委員会
 いわゆる校内委員会について、平成16年度版では正式の制度が用意されていなかったため主に「校内委員会」と呼ばれていました。これは非常に良くなかったと思います。制度設計上、名称も無い委員会はダメだったと思います。せめて仮称でも委員会名を付けておく必要があったと思います。
 平成19年の初等中等局長通知で「特別支援教育に関する委員会」という正式名称が提案されたのですが、平成11年以降ずっと「校内委員会」という名称が使われてきたためか、名称の変更に至りませんでした。
新ガイドラインでも、「特別支援教育に関する委員会」という名称が使われていますが、殆どの所で「校内委員会」という言葉が一人歩きしています。もうそろそろ、正式には「特別支援教育に関する委員会」だが、我が校では略して「特支委員会」、「支援委員会」、「特別支援委員会」「特別支援教育委員会」と呼んでいるなどの呼称の決定を行う必要があると思います。移行期である現在、「特別支援教育に関する委員会(校内委員会)」という用法を丁寧に用いる必要があると思います。煩雑ですが、この項では、そのように用います。なお、平成19年以前については、歴史的経緯から「校内委員会」という名称のみを用いることもあります。

 最初に「校内委員会」が出現したのは、「学習障害児の指導について(報告)」が出された平成11年に遡ります。校内委員会という曖昧な名称で、LD等の疑いのある子どもをピックアップして、専門家チームの判断を仰ぐか否かを協議する委員会でしたので、専ら診断面の役割だったと言えます。
 平成16年度版では「校内における全体的な支援体制を整備するため校内委員会を設置します。」となり、実態把握と支援体制の核としての役割へと変化しました。名称について「校内委員会の名称には,特別支援教育委員会,校内支援委員会,個別支援委員会等各学校の実態に応じた名称が考えられます。」と書かれていたのですが、全体的にはガイドライン自体が「校内委員会」という名称を多用していたため、結果的には名称の変更に失敗しています。今回も、ほぼ同じで、「校内委員会」という名称を多用していますので、その点は良くないと思います。ただし、平成19年の初等中等局長通知により、正式名称の根拠があるわけですので、今回こそ、名称の整理を行う必要があるでしょう。

 「校長のリーダーシップの下,全校的な教育支援体制を確立し,教育上特別の支援を必要とする児童等の実態把握や支援内容の検討等を行うため,特別支援教育に関する委員会(校内委員会)を設置します。」と定義しています。すっきりしていて、診断で無く、実態把握と支援内容の検討が主な任務であることが明記されています。残念ながら、正式名称で書かれているのはこの部分だけでした。

 総論の部分ですでに「医師による障害の診断がないと特別支援教育を行えないというものではなく,児童等の教育的ニーズを踏まえ,後述の校内委員会等により『障害による困難がある』と判断された児童等に対しては,適切な指導や必要な支援を行う必要があります。」と書かれているように、『障害による困難』の判断は特別支援教育に関する委員会(校内委員会)が行う旨、明確にされました。
 この点について、まとまって述べてあるのは18ページの脚注9です。以下、特別支援教育に関する委員会(校内委員会)に関する部分を抜粋します。
 「特別支援教育は,学校教育法第81条第2項各号に記載されている障害種のみならず,あらゆる障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を指します。法律上は,障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとされていますが,これは必ずしも,医師による障害の診断がないと特別支援教育を行えないというものではなく,児童等の教育的ニーズを踏まえ,校内委員会等により『障害による困難がある』と判断された児童等に対しては,個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成を含む適切な支援を行う必要があります。」と書かれています。
 学校教育法第80条で特別支援学校の対象の障害を示し、第81条では特別支援学級の対象者の障害を示しています。81条では、知的障害者、肢体不自由者、身体虚弱者、弱視者、難聴者、その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの(言語障害、自閉症・情緒障害)という障害種だけでなくて、あらゆる障害と書いてある点も注目されます。
 通級の対象となっている学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)が含まれているのはもちろんのこと、平成19年3月15日の特別支援教育課からの通知 
で明らかなように、少なくとも発達障害者支援法の対象者は全て、従来の特殊教育の対象者に加えて、特別支援教育の対象になることが可能です。
 個人的な意見ですが、特別な教育的ニーズを有する児童生徒で、これらの障害種に入らない、不登校や境界線級(ボーダーライン)の知能の子どもの一部にも「学習上又は生活上の困難」が顕著な事例が居ることから、もう少し枠を広げた方が良いと思っています。今後、是非検討して頂きたいところです。

 これらの点は随分改善されたのですが、専門家チームの位置づけが残っているため、大きな矛盾があります。15ページの校内委員会の説明で、「○障害による困難やそれに対する支援内容に関する判断(脚注6)を,専門家チームに求めるかどうかの検討。」が挙げられ、脚注6では、「障害の有無の判断を校内委員会や教員が行うものではないことに十分留意する必要があります。」と書かれています。
 この部分の解釈は難しいのですが、私は以下のように整理しています。本当は、反省して、診断のための専門家チームという制度を廃止した方が良いと思います。現状では、過去の矛盾が残っているので、次のように解釈しています。
   「障害の有無の判断」は専門家チームか、専門医など。【診断的側面】
   「障害による困難の判断」は特別支援教育に関する委員会(校内委員会)が行う。【学習及び生活上の困難、つまり行動面、適応面、学習面など】
   ※特別支援教育の対象とするか否かは、診断ではなくて、教育的ニーズの問題なので、教師が最も専門とする問題である・・・と考えると整理出来ると思います。


 構成員ついては、スクールカウンセラーやスクールケースワーカーの役割が明記されていない点が気になりますが、全ての学校に配置されていない現状では止むを得なかったのかも知れません。

 特別支援教育に関する委員会(校内委員会)の名称ですが、平成16年度版の名称にコメント付けてみます。
 特別支援教育委員会;正式名称として良いと思います。難点は、市町村教育委員会や教育支援委員会と名称が似ていて紛らわしい面があります。
 校内支援委員会;『校内教務委員会』などと呼ぶことがないのと、従来の曖昧な名称の雰囲気を残すので、望ましくないと思います。
 個別支援委員会;平成16年頃はLD等の指導は、個別指導が基本だと誤解されていた名残だと思います。個別指導に限定するのは良くないので、使わない方が良いでしょう。

 長くなると使いにくいので、「特支委員会」、「特別支援委員会」、「教育ニーズ委員会」なども考えられると思います。「各学校の実態に応じた名称」とのことですので、特別支援教育に関する委員会(○○委員会)と併記して、各学校で通じやすい名称を決めて行くことが必要だと思います。それらがいろいろ出てくると、望ましい名称に収斂して行くと思います。
 少なくとも、訳の分からない、内容を示していない、「校内委員会」という名称は使わない方が良いと思います。


 詳しくは、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン 本文をご覧ください。

    

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その12) −第4部 3 特別支援学校用(センター的機能)−  & −第5部 保護者用−

  • 2017.05.07 Sunday
  • 00:48

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 「特別支援学校は、地域における特別支援教育のセンターとして、各学校の要請に応じて、教育上特別の支援を必要とする児童等の教育に関し必要な助言又は援助を行うよう努める旨が,学校教育法第74条に明確に位置づけられています。各学校の特別支援教育を支援する、地域支援チームの中核となります。」と最初に書かれています。

 平成16年度版では、センター的機能が制度化されておらず、また、いわゆる発達障害だけを対象にガイドラインが書かれていたため、盲聾養護学校(特殊教育書学校)の役割は専門家用の章にも書かれていませんでした。
平成19年学校教育法の改正により特別支援教育へと制度改革され、その改革の柱の一つである特別支援学校のセンター的機能が正式に機能し始めました。
 更に、平成24年の中教審初中教育分科会の「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」では、「特別支援学校は、小・中学校等の教員への支援機能、特別支援教育に関する相談・情報提供機能、障害のある児童生徒等への指導・支援機能、関係機関等との連絡・調整機能、小・中学校等の教員に対する研修協力機能、障害のある児童生徒等への施設設備等の提供機能といったセンター的機能を有している。」と述べている。そして、センター的機能の充実・発展を強く勧めていました。
 今回のガイドラインでは、「(特別支援学校に)センター的機能のための組織(例えば「地域支援部」等を設け、校内の校務分掌への位置づけを明確にすることが大切です。」と書かれています。
 今後、ますますセンター的機能への要請が増えてくることが考えられますので、その養成も含めて、しっかりした体制を作っていく方向へ変化していくことが求められているのでしょう。
ちなみに、群馬県立の特別支援学校では、センター的機能として学校へ派遣する「コーディネーター」を「専門アドバイザー」という呼称にし、小中学校のコーディネーターと区別しています。


−第5部 保護者用−

 保護者もチームの一員として、学校への協力と共に、合理的配慮の意思表明を行ったり,個別の教育支援計画への参画など、保護者として行う事をガイドしている書きぶりです。一方的に親に協力を求めたり、逆に学校からのサービスを並べたりする書きぶりではない事が私には好印象でした。
 平成16年度版では「保護者・本人用」でしたが、今回は保護者用のみとなっています。本人の意向を尊重することも大切ですが、本人へのガイドラインは、発達障害ならではの内容でしたので、そのまま今度のガイドラインへ移行する事は難しかったと思います。様々な障害の「本人」に向けたバリエーションは難しいので、保護者と学校で協力して,本人用のガイドラインを作っていくことになるのだと思います。


発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン 本文をご覧ください。
 

 

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その11) −第4部 2 専門家チーム用−

  • 2017.05.04 Thursday
  • 11:53

JUGEMテーマ:学問・学校

 

 専門家チームに関する記載は非常に少なくなっています。平成16年度版では専門家チームに関する記載が、「資料6:専門家チーム報告書の作成例」も含めると非常に多くの紙幅を占めていました。
 元々、平成11年7月2日に、学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議から出された「学習障害児に対する指導について(報告)」が、今日の特別支援教育の方向性を決めたと言って良いのですが、その報告書の別紙として、「学習障害の判断・実態把握基準(試案)」という提案がなされ、そこで、学校では学習障害と判断する事を禁止し、「校内委員会」(この別紙で初めて提案された)で学習障害の恐れがある子どもを挙げ、都道府県や政令指定都市に設ける「専門家チーム」(これも別紙で初めて提案された)で、学習障害であることの判断と、今日で言うなら個別の指導計画(個別の教育支援計画は平成14年12月、個別の指導計画は平成11年学習指導要領から)に類似した「専門家チーム報告書」を作成すること、及びにその報告書を学校は尊重するべきことが書かれていました。
 本文に、専門家による巡回指導も有用な方法と書かれてはいましたが、それと専門家チームは関係なく、専門家チームは専ら学習障害であるか否かの判断と指導方法について細かに書かれた報告書を作成することが役割でした。
 当時、平成16年度版では専門家チームの役割が以下のように規定されました。
    (2)役割 専門家チームの役割としては,次のようなことが求められます。
        LD,ADHD,高機能自閉症か否かの判断・・・これがメイン
        児童生徒への望ましい教育的対応についての専門的意見の提示・・・細かなプランを含む
        学校の支援体制についての指導・助言
        保護者,本人への説明
        校内研修への支援等
 今回、役割について以下の様に書かれています。
    1.専門家チームの役割
    各学校に対して障害による困難に関する判断, 望ましい教育的対応等についての専門的意見を示すことを目的として, 教育委員会等に設置された組織を専門家チームといいます。
    専門家チームの役割としては, 次のようなことが求められます。
    ・障害による困難に関する判断
    ・児童等への望ましい教育的対応についての専門的意見の提示
    ・校内における教育支援体制についての指導・助言
    ・保護者, 本人への説明
    ・校内研修への支援 等
 対象が特別支援教育の対象者全員になったせいで、いわゆる発達障害児だけでなくなったことが一番大きな変更ですが、他は平成16年度版と似た記載です。一見同じに見えるのは制度としての継続性を保ったものと思われます。しかし、最初の役割すなわち発達障害か否かの判断を専門家チームで行うという役割は、この12年間で実現できなかったことです。私見ですが、この点は実現しなかったことは良かったことだと思います。6.3%と推定されていた子どもたちを県に一つの専門家チームが診断、さらには指導の計画を作れるはずがなかったと思います。

 今回、最初の役割が「障害による困難に関する判断」と変更され、診断よりも困難の評価になったことは、大きな改善だと思います。後は同じですが、専門家チームの記載が減ったことに象徴されている様に、センター的機能や学校内の専門家の増加等々により、専門家チームの役割は徐々に減っていくのだと思います。
 これは、元々の制度設計が「診断機関」だったものが、一時、実現不可能な役割を負わされ、実現不能のまま、役割を終えつつあるということだと思います。平成16年度版では不可欠のキーになる役割でしたが、今回のガイドラインでは、相当、役割を減じています。専門家からの助言は,主に個別の教育支援計画へ反映されると位置づけています。もちろん、巡回相談員のチームとして機能している地域もあります。そちらは、巡回相談事業という位置づけで、今後も活躍されるのだと思います。

 したがって、巡回相談は発展しても、専門家チームは過去の組織としてだんだん消えていくのだと予想しています。

 

 詳しくは、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン 本文をご覧ください。

 

 

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その10) −第4部 1 巡回相談員用−

  • 2017.05.01 Monday
  • 22:39

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 まず、「各学校を巡回し,教員に対して教育上特別の支援を必要とする児童等に対する支援内容・方法に関する支援・助言を行うことを目的として,教育委員会・学校等に配置された専門的知識を有する指導主事・教員等を巡回相談員といいます。」と定義が書かれています。
 平成16年度版では、目的の項に、「児童生徒一人一人のニーズを把握し,児童生徒が必要とする支援の内容と方法を明らかにするために,担任,特別支援教育コーディネーター,保護者など児童生徒の支援を実施する者の相談を受け,助言することが巡回相談の目的です。また,支援の実施と評価についても学校に協力します。」と、役割について書かれていました。それと比較すると今回の定義は随分すっきりしましたし、内容が指導助言の方に重心を移していると思います。また、平成16年度版ではLD等に限定されていましたが、今回は対象を限定していないという点が注目されます。
 群馬県では「専門相談員」という名称で、各教育事務所に専任の巡回相談員を平成15年から配置し、多くの成果をあげていますが、そのような例は少ないと思います。
 同じく、群馬県の前橋市、高崎市、渋川市では、午前に巡回して、午後に通級として児童生徒を受け入れるという形式のLD通級があります。東京都でも最近取り組み始めた、特別支援教室の場合、群馬と同様に、通級プラス巡回相談という形式の制度が行われる様になりました。
 今後様々な形式で工夫されるのでしょうが、学校外の専門家として、学校の様子も分かり、特別支援教育についての知識も技能も有する専門家が重要です。上記の定義を参考に、巡回相談員の質と量が高まることが期待されます。
求められる資質・技能に以下のものが加わりました。
     コンサルテーションやコーチングなど教師への支援に関する知識と技能
     地域資源の状況を把握したり, 地域の関連機関との連携を行うための知識や技能
     個人情報の取り扱いに関する知識 等
 LD等の発達障害に限定されなくなったことと共に、上記の様に、より具体的に教師へコンサルテーションを行う役割が期待されています。指導主事は英語でスーパーバイザーですので、そのような役割が求められているのだと思います。

  

 

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その9) −第3部 4 通級担当教員、特別支援学級担任及び養護教諭用−

  • 2017.04.29 Saturday
  • 10:37

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 これまでの所で学校内の専門家として挙げられてきた職種等の内、スクールカウンセラーやスクールケースワーカーを除いた方々について、述べられています。これらの職種は「教員」に入るため、学校側の職員というイメージがあるのかも知れません。今後、スクールカウンセラーやスクールケースワーカーが定着し、学校内で「内の職員」という位置づけにまでなると良いのですが、若干時間がかかるのかも知れません。一部は「内の職員」になっている方もいるので、次のガイドラインでは書き込まれる様になることを期待しています。なお、平成16年度版では専門家チームの一員として「心理学の専門家」と述べられてはいましたが、カウンセラーも触れられていなかったので、今回、スクールカウンセラーやスクールケースワーカーの役割は重視されていると考えられます。
 さて、通級担当教員、特別支援学級担任という並びは、平成16年度版では専ら特殊学級担任だったことと比べると隔世の感があります。通級担当教員の役割が大きくなっていることは、通級の急増と共に、通常の学級担任の役割が大きくなったことと対応していると思います。平成16年度版では下敷きとして、学習障害児の個別指導が重視されていた傾向があったと思いますが、新ガイドラインは、医療的ケアが必要な子どもも含めて、全ての特別支援教育の対象を意識して書いてあり、かつまた、学級の中で、学級経営や教科指導など通常の場面を重視していることが大きな特徴です。そのため、通常の学級を支える通級の役割が大きくなっているのだと思います。
 通級の指導では、自立活動を中心とした内容が基本と書かれています。ややもすると、教科の補充指導が中心になっているという現状を聞くことがありますが、基本は自立活動です。したがって、通級担当教員へは自立活動や特別支援教育に詳しい先生を当てる、あるいは、それらの研修を意図的に行って頂きたいと思います。そうでなければ、教科の補充が中心になるのは止むを得ない事になります。通級で主に行う教育活動は自立活動なのだということが常識にならないと変なのです。
 通級担当教員は、学級担任やコーディネーターそして校内委員会との連携・協力が求められています。自校通級なら容易ですが、他校通級の場合、これらの役割を位置づけて時間等を配置しないと、通級担当の先生は大変になります。
 次に、特別支援学級担任について述べてあります。まず、担当する障害種に限定されていますが、学校内の専門家として担任等への支援だけで無く助言についても明記されています。特別支援学級での指導の項で、特別支援学校教諭免許状の取得を勧められているのは注目されます。さらに、交流及び共同学習の推進が役割として書かれています。
 養護教諭の記述では、医療的ケアについて書いてあることが注目されます。平成 27 年5月1日調査では、全国の公立小中学校において、日常的に医療的ケアが必要な児童生徒は 839 名と報告されています。その対策において養護教諭の役割は非常に大切です。
 養護教諭の役割で、「医療機関への受診の必要性等について、学校医に相談します。」と述べられていますが、保護者へ受診を勧める等の記載はありません。

 以上のように、通級担当教員の役割や養護教諭の役割は、今回のガイドラインで新に書き加えられ、特別支援学級担任の役割はすっきりとまとめて述べられています。

「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」の解説(その8) −第3部 3 通常の学級の担任・教科担任用−

  • 2017.04.26 Wednesday
  • 22:21

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 小中学校で通常の学級を担当している、担任や教科担任用(以下、担任用と略記)の内容です。この部分も11ページにわたって書き込まれており、今回の改正で通常の学級にかなり力を入れていることが分かります。
 担任用の特徴は、事例が厳選されて書かれている点です。短いものですが、実施できそうな事例が挙げられています。とても良い例が多いと思いました。
 p.34の「学級担任や教科担任として支援が必要な児童等のサインに気付くための場面や機会の例」は国立特別支援教育総合研究所からの引用ですが、良く整理されています。
 また、対応として基本に学級経営が書かれており、個別の治療的対応よりも、暖かい学級経営と分かりやすい授業を基礎にしていることがうかがわれ、とても良いと思いました。
 個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成は全員について必須であることが明記されています。また、平成16年度版にはみられなかった「ケース会議」が重視されているのも特徴の一つです。※ 特別支援教育に関する委員会(校内委員会)のもとで、少人数のケース会議を開催して、個別の教育支援計画、指導計画を作成し、校内の専門家(スクールカウンセラーやスクールケースワーカー、特別支援教育支援員、特別支援学級教諭など)および学校外の専門家(専門家チームや特別支援学校のセンター的機能で派遣されるコーディネーターなど)を活用して、対応していくことが書かれています。
 保護者との対応についても述べてありますが、信頼醸成に力を注いでいます。特別支援教育の対象であるか否かは、特別支援教育に関する委員会で決めることになっていますので、以前から医師の診断は不可欠ではないとされていましたが、ここでも、診断を勧めるという記述は無く、順当な説明だと思いました。

※(4月27日 追記 : 4ページの本文と18ページの脚注に、「必ずしも,医師による障害の診断がないと特別支援教育を行えないというものではなく,児童等の教育的ニーズを踏まえ,後述の校内委員会等により「障害による困難がある」と判断された児童等に対しては,適切な指導や必要な支援を行う必要があります。」と下線付きで明確に書かれています。
 最後に、交流と共同学習の重要性について述べられています。


 元々、「共同学習」という概念は、平成16年の障害者基本法改定の折りに、インクルーシブ教育の意味で「共同学習」という概念が条文に加えられたのですが、それを知っている方は少ないようです。「交流」は、主に障害のある子と障害のない子の交流を通じて相互に理解し尊重できる関係を構築することを目的に行う教育活動で、「共同学習」は同じ教育の場で、それぞれの児童生徒の教育目標を達成するための学習を行う教育活動と言って良いと筆者は思っています。そろそろ、両者を分けて考えるようにした方が良いと思います。しかし、新ガイドラインでも両者を区別せず「交流及び共同学習」として述べているのは、少し残念です。

 

2017年5月9日修正 ※印の文章「平成16年度版にはみられなかった『ケース会議』が重視されているのも特徴の一つです。」と書きましたが、平成16年度版にもケース会議は説明されていました。今回、位置付けは整理されたのですが、内容的に大きく違っていませんので、「平成16年度版と比較すると、『ケース会議』がより重視されるようになったようです。」に訂正させて頂きます。

 

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