発達障害の特性という考え方 2

  • 2017.03.06 Monday
  • 00:00

JUGEMテーマ:学問・学校

 

前回の投稿の続きを書きました。

 

4.「特異的症状」と「非特異的症状」

 

 前述のように、現在、発達障害関係で語られる「特性」は、診断するときに注目されている症状を中心に語られています。この点について、もう一つ押さえておく必要があるのが、「特異的症状」と「非特異的症状」という区別です。
 病気と言ってもいろいろな症状があります。普通の風邪を引いても、インフルエンザに罹っても、どちらも熱が出ますし,咳もでます。明らかにインフルエンザだけで出てくる症状は、インフルエンザ・ウィルスの存在です。最近はウィルスの型を検査して、それから抗ウィルス薬の投与が行われる様になりました。
 ウィルスの存在は、そのインフルエンザ型だけに認められる「特異的症状」と言えます。普通の風邪では、出てこない症状(病気の特徴的な状態)です。一方、熱や咳は、いろいろな病気で出現する特異的ではない「非特異的症状」です。
発達障害のどれかの診断が付く場合、例えば「落ち着きがない」という症状があっても、どのタイプか決める事は困難です。幼くても「落ち着きがない」という状態を示しますし、自閉症の子も多くは落ち着きがないし、学習障害の子も落ち着きがない子が少なくありません。分娩室の前で出産を待っている父親も落ち着きなくウロウロすることがあります。
 ある教科の、それも一部が難しいという状態も、多くの人に認められる状態です。(もちろん、全般に難しい人もいるのです。)ある教科の重要な基礎が未学習だと,関連する部分だけ出来ないという現象も起こり得ます。
 自閉症児が顕著に目を合わせない現象(視線回避;gaze avoidance) は、他の障害では認めることが難しい程度ですし、乳児期の泣き声の感情的差異の少なさも他の障害では認め難いため、個人的見解ですが、「特異的症状」と思っています。
 昔の、1万人に3〜4人という出現頻度の時代の自閉症児は、上記のような理由で、特異的症状があると考えています。以下この小論では、そのような事例を除外した上で、以下、「いわゆる発達障害児」とLD,ADHD, 自閉症の一部を呼ぶことにします。

 

5.学習障害児の検査はあるのか?

 

 このように、特異的症状という観点から考えると、いわゆる発達障害児の定義は、「非特異的症状」で定義されています。そのため、例えば,学習障害児を判別するテストは、随分昔から試みられていますが、決定打は今でも出来ていないのです。なぜなら、障害の定義そのものが不明確ですので、検査を作りたくてもその基準がないのです。「非特異的症状」であるその障害の特性は,他の子どもより「著しい」ので症状として認められるという宿命を持っています。どの程度だと「著しい」と言えるか、あくまで程度問題なので決める事が元々困難なのです。
 強いて、著しいという基準を設けるとすると、知的障害のように、標準値からの逸脱の程度(平均からどのくらい離れているか)という統計的基準位しか定義しにくいのです。もし知能検査のように統計的な基準を用いるとしたら、各年齢の中での分布を調べて、それぞれ異常(著しい)という範囲に入る割合は2.5%となります。
 さらに、知能の検査項目も大きな問題がありますが、行動上の特徴を表す尺度となると、様々な次元がありますし、それらを物差しにするための項目をどう設定すれば良いかという大きな問題もあります。例えば,「落ち着きがない」という次元を不注意の程度と決めても、幼児の不注意と中学生の不注意、大人の不注意をどういう項目で測定するか,簡単ではありません。例えば、周囲の大人(教師や親)が不注意ないしは落ち着きがないという印象を得ている程度で評定していますが、その印象を確からしくする手続きは、なかなか難しいのです。
 このように、非特異的症状で定義している故に、学習障害児やADHDの検査は作り難いのです。何か検査はありませんか?と聞かれるのですが、これぞ有用な検査だと言えるものは、私には見つかっていません。例えば、K-ABCという検査が学習障害児の検査であるかの様に思われた時期がありましたが、元々知能検査の一種でした。スクリーニングの検査が発売されましたが、あるものは、13%が該当するという粗いものでした。
 今では、学習障害児は非特異的症状で定義されているので、検査を作るのが困難なのです。実態を把握したければ、通常の学習の時、従来はテストで○を数えて、教えたことがどの程度定着したかを計るが、学習障害については、×になるプロセスを分析して、どのような考えで×になったかを検討することが大事でしょうと答えています。

発達障害の特性という考え方

  • 2017.02.28 Tuesday
  • 23:24

JUGEMテーマ:学問・学校

1. 「発達障害児の特性」という色眼鏡

 

「特性の理解」や「特性に応じた指導」・・・全くの類型論で非生産的です。
 この頃、次のようなたとえ話を講義のときにします。
 ADHDの子どもが3回離席しました。「離席」という症状をカウントしても、ADHDというレッテルを確認するだけです。それより、離席した理由を探ってみましょう。
 一回目は,トイレに行きたくて離席しました。二回目は、隣の子が、鉛筆でつついたので離席しました。三回目は先生の授業が退屈で離席しました。
 一回目の離席には、「先生オシッコ」と言う様に教え、二回目の離席では,隣の子を叱り、三回目の離席では自らの授業を反省する・・・。それぞれの離席には意味があるので、「多動性」や「衝動性」という「特性」で見るより、その子どもの行動の意味を理解しようする方が、ずっと良いのです。
 ADHDの子どもが離席するのは、注意が持続しないとか、衝動的で席を立ってしまうとか、多動で落ち着きがないから・・・・など、いずれも状態像に,それらしい専門用語をレッテルのように貼っているだけで、解決の糸口になりません。
 上記の例は、ちょっと、「特性」とか「ADHDという障害」という色眼鏡を外せば、どなたにも見えてくる行動の意味なのです。
先生方の素直な目を惑わす「特性」を、本気で批判する必要があると思っています。

 

2. 「特性に応じた指導」という幻想


   (趣旨は、特別支援教育研究に以前書いたものに加筆。)
 このごろ、発達障害の子どもに「特性に応じた指導」をしたら、他の子にも良かった。という感想を聞くことがあります。「特性に応じた指導」という言葉も多くは幻想なのではないでしょうか?
 図は、丸さんと六角さんという例えばADHDの子どもがいるとします。そして、いわゆる定型発達(この言葉も誤解を生んでいると思いますが、ここでは使います)の四角さんという子どもがいるとします。丸さんと六角さんに共通で、四角さんとは異なる部分が「障害特性」ということになります。三人に共通の部分は共通性と呼んで良いと思います。六角さんについて言うと、他の人と異なる「個性」の領域もあります。このように、共通性、個性そして障害特性と分けてみると、議論が整理されると思います。
 障害特性に応じた指導とは、例えば、盲の子どもに点字を教えるようなもので、その障害の特性に合致した指導です。点字を晴眼の子どもに教えても、その子の学力は上がりません。発達障害の場合、そもそも、どんな特性に応じているのかが不明確なのですが、よく「特性に応じた指導をしたら、他の子にも良かった。」と言います。それが正しいなら、その指導は共通性に働きかけているのです。共通性に働きかける指導を「丁寧に」行ったから、他の子どもにも役立ったのです。

 

 

 

 平成11年7月の文部省の「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議の報告書「学習障害児に対する指導について(報告)」の結論の部分を少し長くなるが引用します。


4 学習障害児に対する指導方法
(1)従来の特殊教育の特徴は、教科の指導と並んで障害に基づく種々の困難の改善・克服を目指す自立活動(養護・訓練)の指導を行うことにある。これに対し、学習障害児に対する指導は、特定の能力の困難に起因する教科学習の遅れを補う教科の指導が中心となる。このため、学習障害とは別の理由により教科学習に遅れが見られる児童生徒に対する指導内容・方法と重複する部分も少なくなく、学習障害に特有の指導内容・方法を明確に示すことは現時点では困難である。ただし、反面これは、障害のない児童生徒に対する指導においても、学習障害児に対する指導内容・方法を広く活用することができるということも意味している。


 「学習障害に特有の指導内容・方法を明確に示すことは現時点では困難である。」と明確に書かれているのです。(その後、文科省から発見したという報告は無いと思います)。
 これこそ、「特性に応じた指導」が幻想であることを如実に示しているのではないでしょうか?
 ADHDの衝動性という特性や多動性という特性に、ぴったりと対応した指導を挙げることができる人は何人いるでしょう?本当は、無くは無いのですが、多くの本に挙げられている事は、共通性へのアプローチであることが多いと言えます。
 結論めいたことを書くと、先生方は教育のプロとして、目の前の子どもの学習上の困難や学級への適応の難しさに対して、普通の教育の方法(共通性へのアプローチ)を丁寧にされることが、今、最も必要な事なのではないでしょうか。

 発達障害児の特性を学んだのは、その子ども達が怠けているとか、しつけがなってないとか、先入観にとらわれない様にするための知識ではあったと思います。しかし、それがいつの間にか、先生方の素直な目をふさぐ結果になっている様に思います。

 

3.そもそも「特性」とは
 特性を知らないと教育できないかのような論調はどこから来たのでしょう。
 発達障害児の特性としてあげられている特徴の多くは、各障害の診断に役立つ症状(多くは行動特徴の一部)としてあげられている事項です。
 ADHDの不注意、衝動性、多動性など、ADHDと診断するときの定義に出てくる症状です。実際は、自閉症児は幼児期に顕著な多動性を示すことが多いのですが、その症状は、成長に従って減少してくることが多いので、自閉症の「特性」には挙げられません。また、ADHDの多動性も年齢と共に減少してくるので「注意欠如」という、成長しても残存すると考えられる症状が、定義の基本になっているという具合に、持続する症状が重視されています。
 ローナ・ウィングの「自閉症児との接し方」(1973) には、幼児期に多動が多いと述べられていますが、多くの自閉症児の本には述べられていません。幼稚園の多くで、多動が最も大きな問題になっているのにもかかわらず。
 お医者さんにとっては、診断する上で、他の障害と区別する特徴はとても大事です。それが重視されることも分かります。しかし、それがそのまま幼稚園や学校の先生に伝えられ、最も大事なことになるのは理解出来ません。
 先に述べました様に、教育においては、共通性へ丁寧に働きかける体系を、営々と築いてきました。それが自閉症の発達にも寄与してきました。その視座には、行動の意味や意義、そして発達の経過などが重視され、症状の違いが中心ではなかったのでは無いでしょうか。1980年からの特性重視の姿勢は、多くの誤解を生んできたと思います。      (文責 久田信行)

 

バレンタインデーに肉まんで乾杯プロジェクト

  • 2017.02.01 Wednesday
  • 23:43

 昨年に引き続きの企画ですが、場面緘黙の方に向けて、かんもくの声というFBで、興味深い呼びかけがあります。
詳しくは、下記をご覧いただくとして、概略を紹介します。


https://www.facebook.com/kanmokunokoe/photos/a.469093996569064.1073741828.452137341598063/1125634277581696/?type=3

 

 場面緘黙の方は、例えばコンビニなどで欲しい物があっても、注文を口頭ですることが大変だったりします。黙って棚から取って,レジでカウンターに出せる物は良いのですが、注文しなければならない物は大変という訳です。
 そこで、バレンタインデーの15時に紙に書いたメッセージで肉まんを買って、全国のコンビニのそばの所で、他の人も食べているに違いないと思いつつ、同じ空の下で、一緒に肉まんで乾杯をしようという呼びかけです。

 吃音の方も、コンビニで注文するのは苦手です。ろうの方や脳性まひの方の一部にも口頭で注文するのが困難な方がいます。
 文字カードで買い物の注文が普通に出来る世の中になるのは素敵ではないでしょうか?

 去年は、声を出さずに買うことを勧めていましたが、「かんもくの声」さんは色々お考えになって、声を出すのも含めて、ご自分が楽な方法で買うことに、今年は変更されました。

 

 私は、2月14日は用事があって15時には難しいかもしれませんが、できれば15時、だめなら17時に乾杯するつもりです。

 以下のようなプリントをもって、コンビニに行こうと思っています。

 

=================================================
「普通の肉まん、ひとつ ください。」
私は「場面緘黙(ばめんかんもく)」や「吃音症」
(きつおんしょう)といった、買い物のときに、
緊張や不安で、非常に声が出にくくなる方々の支援者
です。
筆談で買うのが当たり前になるといいなーと思って
います。宜しく、ご協力ください。

 

バレンタインデー15時に肉まんで乾杯プロジェクト
=================================================

「前橋市における障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領」

  • 2017.01.27 Friday
  • 01:20

JUGEMテーマ:学問・学校

 

「前橋市における障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領」
が完成し,ホームページにアップされました。
http://www.city.maebashi.gunma.jp/kurashi/230/257/006/p006742.html

 
(1)子どもたちの理解促進 
(3)保護者や地域住民等に対する啓発活動 
といった理解促進(閣議決定の「基本方針」にはあったが、
文科省など多くの対応要領では省かれていた内容)も入っている。
また、合理的配慮の提供など、校内でどう話を進めるかなど具体的な
対応が書かれている。障害別の記述が簡潔だが充実している。このように、
とても分かりやすい対応要領になっている。

対応要領の読み比べをした方は少ないと思うが、他と比べて
みて頂けると面白いだろう。前橋市の対応要領は、かなり良い
ものになっている。

出来れば、読んで、感想をコメントして頂けると幸いです。

国連 持続可能な開発目標(SDGs)

  • 2017.01.25 Wednesday
  • 21:29

JUGEMテーマ:学問・学校

 

持続可能な開発目標のシンポジウムの様なフォーラムが開催されます(2月21日)が、国連 持続可能な開発目標(SDGs)そのものが低開発国への経済援助のように誤解されて、余り知られていません。そこで、私のホームページに紹介のページを作りました。 http://mon.psychoreha.org/SDGs.html 首相官邸とユネスコ国内委員会の方針に解説を加えました。良かったらご覧ください。

 

国連 持続可能な開発目標(SDGs) 外務省のサイトに日本訳から、教育の部分だけ以下にあげます


目標 4 . すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
4.1  2030 年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
4.2  2030 年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
4.3  2030 年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
4.4  2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
4.5  2030 年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
4.6  2030 年までに、すべての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
4.7  2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
4.a  子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
4.b  2020 年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
4.c  2030 年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。

 

 上記のような背景から、今国会の施政方針演説で、大学までの無償化などが打ち出されたという面もありそうです。

 

障害者の権利に関する条約 第1回日本政府報告 抜粋 (正文は英語)2016年6月

  • 2017.01.05 Thursday
  • 01:00

  障害者の権利条約について、日本政府が取り組みの状況を国連へ報告することになっていますが、その第一回の報告が2016年6月に提出されました。政府仮訳や正文(英語)は外務省のHPからダウンロード出来ます。

 小生のHPの資料集に第8条と第24条の部分だけ抜粋した資料を掲載しました。

 

 この文書の24条教育に関する記述で「合理的配慮」はただ一か所のみ。他は、それぞれに支援とか援助と書かれている点も 注目されます。

 「インクルーシブ教育システム」という言葉は全く使われていません。

 私的には、第8条関係で教育のことが書かれていない点が恥ずかしいところです。

 

 権利条約により教育の何が変わったのかを国連に報告している文書です。インクルーシブ教育や特別支援教育について、実態と比較して考えると、今後を考える上で参考になると思いました。

 

 なお、1〜4ページの p15 などは、元の資料のページ数。段落の前の番号は、元の資料に付いていた「段落番号」です。

 

 5ページからの資料は障害者基本法に定められている障害者基本計画のモニタリングで、「第3次障害者基本計画の実施期 間の中間年」なので、障害者政策委員会で作製した報告書の抜粋です。そのあとに権利条約24条に関する部分の英文も載せています。

 つまり、主に1〜4ページの報告をお読み頂ければ概略は捉えられると思います。

 

国連 持続可能な開発目標は障害者の生活に関係している

  • 2016.12.16 Friday
  • 22:51

−障害者政策委員会でSDGsが説明された−

 

 なかなかSDGsのことを説明している資料がありません。本当は大切だと思うのですが、余りにも知られていないと思います。

たまたま、障害者政策委員会で外務省の方が説明している資料がありました。本来は、リンクで済ませる方が良いのでしょうが、読んで頂きたいので、長いですが、以下に引用します。出来ましたらご一読下さい。障害者の権利条約も大切ですが、SDGsも大切だと思います。

 


持続可能な開発目標(SDGs)について
                           平成 28 年7月 29 日
                           外務省地球規模課題総括課

1 持続可能な開発目標(SDGs)に関する経緯


 持続可能な開発目標(SDGs)は,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された,2016年から2030年までの国際開発目標である。
 前身のMDGsは,2000年に採択された「国連ミレニアム宣言」と,1990年代の主要な国際会議で採択された国際開発目標を統合したもので,発展途上国向けに,2015年を達成期限として,”郎ぁΦ臆遏き⊇蘚教育,女性,て幼児,デセ塞悄き疾病,Т超,連帯という8つの目標を設定した。
 15年間に及ぶ国際社会のMDGsに対する取組は,幾つかの分野で大きな成果を上げた。例えば目標1に掲げられた「極度の貧困と飢餓の撲滅」では,極度の貧困状態に置かれている人の数は,1990年のおよそ19億人から,2015年にはおよそ8.4億人と,半分以下に減少した。
 このように明らかな進展がみられる分野がある一方で,未達成の課題が残されていたり,達成度について地域的なばらつきがあるなど,全ての分野において成功を収めたとは言いきれない状況がある。またこの15年間で,環境問題や気候変動問題の深刻化,国内の格差及び国と国との格差の拡大,開発協力に関わるアクターの多様化など,開発を取りまく国際環境も著しく変化している。
MDGsの達成期限である2015年が近づくにつれ,こうした状況に対応する新たな開発目標が必要であるとの認識が国際社会で広まり,3年半に及ぶ議論と政府間の交渉を通じて,新たにSDGsが策定されることになった。

 

2 SDGsの概要


(1)SDGsの各ゴール(目標)
 SDGsは,先進国を含む国際社会全体の開発目標として,2030年を達成期限とする包括的な17の目標と,これらを細分化した169のターゲットを設定している。SDGsの理念は,我が国が推進する人間の安全保障の要素を反映した「誰一人取り残さない」ことである。また,そのために,相互に関連する17の目標に対して,統合的に取り組んでいくことが重視されている。さらに,政府に限らず,民間企業,NGO,有識者など,全ての関係者が協力して取り組んでいくことも重視されている。
 SDGsの内容を見ると,8つの目標と21のターゲットから成っていたMDGsと比べ,目標の数が大幅に増えており,広範で包括的なものとなっている。具体的には,目標1から6のように,貧困,飢餓,健康,教育,ジェンダー,水と衛生など,MDGsに掲げられていた目標を引き継いだ上で,これをさらに推し進めたものが含まれている。更に,SDGsでは,持続可能で,包摂的かつ強靱な成長の重要性に関する国際的な認識の高まりも反映して,新たな開発課題が新たに加わっている。目標7から16に掲げられた経済成長やインフラ,格差是正,持続可能な消費・生産や気候変動対策,さらには平和の実現までも含む一連の目標は,MDGsには明確な形では含まれていなかったものである。日本を含む先進国は,これらの目標を自らの国内で達成するとともに,発展途上国の目標達成に向けた取組を支援することが求められている。

(2)障害者に関係するゴール(目標)
 障害者については,「脆弱な人々」のグループとして,子供,若者,高齢者等と並び位置づけられており,SDGsの各目標のうち,目標4の質の高い教育,8の人間らしい雇用,11の持続可能な都市と人間居住について,明確に言及された形で目標が定められている。

 

(参考)持続可能な開発のための 2030 アジェンダ和文仮訳から抜粋
目標 4. すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し,生涯学習の機会を促進する
     4.5 2030 年までに,教育におけるジェンダー格差を無くし,障害者,先住民及び脆弱な立場にある子どもなど,脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
目標8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
     8.5 2030 年までに,若者や障害者を含むすべての男性及び女性の,完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事,ならびに同一労働同一賃金を達成する。
目標 11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
     11.2 2030 年までに,脆弱な立場にある人々,女性,子ども,障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し,公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により,すべての人々に,安全かつ安価で容易に利用できる,持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
     11.7 2030 年までに,女性,子ども,高齢者及び障害者を含め,人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。

 

3 SDGs推進本部の立ち上げについて
 日本は,国際社会の議論が本格化する前から,政策対話の主催(2011年〜2013年),国連総会でのサイドイベント開催等を通じて,SDGsの策定に積極的に貢献した。SDGsの交渉過程でも,人間の安全保障の理念の下で積極的に貢献し,我が国の重視する開発課題を盛り込んだ(質の高いインフラ,保健,女性,教育,防災等)。昨年9月の国連サミットでも,安倍総理から,SDGsの実施に最大限取り組む旨を表明している。
 今後,SDGsの達成に国内実施と国際協力の両面で率先して取り組むには,関係省庁が連携し,政府一体で取り組む体制が不可欠である。更に,本年5月のG7伊勢志摩サミットでもSDGsが主要な議題として議論され,議長国としてSDGsに率先して取り組む姿勢を示すことが重要であったことから,本年5月20日,安倍総理大臣を本部長とし,全閣僚を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を内閣に設置した。同日開催された第一回会合において,今後の政府の取組の指針となる「SDGs実施指針」を策定していくことを決定し,現在,検討作業が進められているところである。

 

4 今後の進め方について
 今後は,各国が2030年に向けてSDGの実施に着実に取り組むとともに,その進捗状況を,具体的な指標に基づいてモニタリングし,フォローアップしていくことが重要である。
 そのために,国連統計委員会において世界共通の指標の案の検討が進められ,本年3月,同委員会において合計231の指標案が決定された。また,国連でフォローアップを行う場として,「持続可能な開発に向けたハイレベル政治フォーラム」が毎年開催されることとなっており,第一回のフォーラムが今月11日から20日までニューヨークで開催されたところである。
 日本としては,SDGs推進本部の下で国内実施と国際協力の両面で積極的に取り組むとともに,そのレビューやフォローアップ,更には国際社会への発信を着実に行い,誰一人取り残さない,持続可能な世界の実現に向けて貢献していくことが重要である。

11月 ニーズ教育研究会

  • 2016.11.01 Tuesday
  • 22:48

JUGEMテーマ:学問・学校

 

今月の定例研究会は11月8日(火)です。 
差別解消法の施行に伴って「合理的配慮」について様々なことが言われていました。
しかし、現在の所、いろいろ言っていたが、結局なんなのだろうね・・・という感じだと思います。そのままで問題がないのなら良いのですが、そうも行かないと思います。
合理的配慮をめぐる問題は、今後、保護者の皆さんの要望と学校側の対応という形で混乱を生むことが一番心配です。その時、矢面に立たされて苦労するのは親御さんと担任の先生方だと思います。 

もともと差別の問題は複雑な事ですので、それほど簡単ではありません。すごく分かりやすい事になるという過剰な期待はしないようにお願いします。 しかし、今日の混乱は、混乱の元を知ることでだいぶ分かりやすくはなるとは思います。 
そのような議論を行いたいと存じます。
 
                        記 
     
    場所 群馬医療福祉大学 前橋キャンパス 
 
    住所 〒371-0823 群馬県前橋市川曲町191-1 
 
    会場 2号館2階221教室(門を入ってすぐの建物) 
     
    日時 2016年11月8日火曜日 19時〜20時30分 
    (警備上、21時以降の使用禁止) 
   
    議題 
    今、合理的配慮について点検しましょう。  
 
    ※ご参加頂ける方、11月7日までに、hisata@psychoreha.org までメールを頂けますと幸いです。 


                                      文責 久田信行

平成28年度 全国学力・学習状況調査を偏差値から読み解く

  • 2016.10.03 Monday
  • 17:59

JUGEMテーマ:学問・学校


平成28年度 全国学力・学習状況調査の学力成績から偏差値を求め要点だけをまとめました。
全国平均が5%の範囲で狭い分布をしているのは、文科省のグラフからも明らかですが、偏差値にして比較すると、偏差値にして49〜52という値で、各県の平均値は余り差が無いことが分かります。
http://mon.psychoreha.org/tsk/gakuryoku2016.pdf

各都道府県の平均値は、全国平均とほぼ同じ値だと言って良いと思います。
一番偏差値の差が大きかった、中学校数学Aでも偏差値46〜53という値でした。

 

※ある意味では、英国のサッチャー政権が目指していた、ナショナル・カリキュラム(=学習指導要領)による、全国の教育のレベルを平等にすることに、日本は成功していることを意味すると思います。これと、個々の子どもを伸ばすことが一致しにくい事が大問題なのでしょうが、教育の規格化という意味では成功していると思います。全国津々浦々に教育を普及させること・・当たり前ですが、大事な事です。

 

平均値の全国順位に一喜一憂するのは、統計的にはほぼ意味がありません。その差よりも、今回の調査で強調されている貧困が成績を低くする事実や、落ちこぼれなど、授業について行けない児童・生徒の問題に取り組む方が生産的だと思います。


その元になった偏差値のリストは
http://mon.psychoreha.org/tsk/gakuryoku2016(2).pdf

 

これらの資料を載せた、ホームページにはエクセルファイルへのリンクも設けております。
http://mon.psychoreha.org/tsk/link01.html
△鉢の内容は同じです。

「合理的配慮と差別」 そもそも差別とは何か(資料)

  • 2016.08.15 Monday
  • 16:54

JUGEMテーマ:学問・学校

 

  差別の類型の考え方の比較ができる表など、私にとって分かりやすい資料をまとめました。

合計4頁の資料です。(資料)  http://mon.psychoreha.org/DEV/sabetu20160815.pdf 

<読みにくいので記事を書き改めました>

 

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